環境事典 環境全般Ⅱ

ヒートアイランド現象

都市部の気温が異常な高温になる現象。その都市周辺の気温分布を描いてみると、等温線が都市を中心に島のような形で市街地を取り巻いている状態になることから「熱の島」と呼ばれるようになった。いくっもの原因が悪循環のように重なり、気温が異常に高くなる現象で、(1) エアコンや自動車からの人工排熱の増加。
(2) 建物や道路などのコンクリートとアスファルトは太陽光を吸収して蓄熱する性質があり、日が沈んだ夜間は熱気を放出する。
(3) 地表面積のコンクリートの比率が増えたのに反比例して緑地面積や水路が減少したため、樹木の蒸散作用による太陽熱の緩和や夜間の放射冷却など、気温の自然な調整メカニズムを狂わせてしまった、などが原因として考えられる。適度な緑地や水路があり、地面も保水性があれば太陽熱を過剰に蓄熱することもなく、エアコンの使用エネルギーも最小限に抑えられる。緑地は夜間の放射冷去陛もたらし、風が流れると「夕涼み」のような効果をもたらしていた。

オフィスや商業施設、高層集合住宅などが集中することにより、エアコンの排熱だけでなく、経済活動に伴う照明器具やオフィス機器類の排熱、飲食店が使う火力から出る熱、さらに自動車が排出する熱と太陽熱とが大気を加速的に加熱する。

地上1000m 付近を流れる風に閉じ込められ、「アーバンドーム」と呼ばれる温室状の空気層が形成される。東京23 区の場合を例にすると、東京湾岸に林立した超高層ビル群が海風を遮る衝立の役割を果たし、アーバンドームが生まれる条件がそろってしまった。そこに閉鎖的な空気の循環が生じ、粉じんなど大気汚染を封印する「ダスト・ドーム」になる。

ヒートアイランド現象の対策として、(1) エアコンや自動車など人工排熱を削減する、(2)緑地面積の拡大と地面の保水性、透水性を改善する取り組みが進んでいる。屋上・壁面緑化の普及や都心の交通システムの見直しなど課題は多い。

バックキャスティング

複数の未来の中から「ありたい未来」を定め、今なすべきことを考える手法。スウェーデンの環境NGO「非政府組織汀ナチュラル・ステップ」の創始者であるカール・ロベールが提唱して広まり、地球温暖化などの議論の場で用いられるようになった。現在考えられる事象の延長線上に将来を考える「フォアキャスティング」とは対照的な手法である。

OECD( 経済協力開発機構) が1994 年から始めた環境保全型交通体系(EST)の中でこの考え方を用いている。
運輸部門から排出される2030 年の地球温暖化ガスの排出許容値を目標値に定め、その水準を達成するために何をすべきかといった視点で議論を進めている。日本の環境先進企業でも、バックキャスティングの考え方を取り入れる企業が出てきた。リコーは、50 年の「超長期環境ビジョン」を描いた上で、10 年度までに環境負荷をまず20 %削減するという「2010 年長期環境目標」を設定した。

予防原則

因果関係において科学的な不確実性が残っていても、大きな被害が予想できる場合は、早めに対策を打つという考え方。地球温暖化を抑制するための京都議定書や、6 つの化学物質の原則使用禁止を定めたROHS(有害物質使用制限) 指令が典型的な適用例だ。

2002 年にヨハネスブルクで開かれた持続可能な開発に関する世界首脳会議( 環境開発サミット)では、予防原則の明記に米国と日本などが反対し、予防原則ではなく予防的措置という言葉になった経緯がある。日米政府は予防原則の考え方を否定しないが、それは政策的な措置( アプローチ) の1 つであり、「原則」とすることには同意していない。

予防原則と混同しやすい考え方に「未然防止」がある。未然防止は科学的な因果関係が明白な場合に事前に対策を打つ、いわゆる転ばぬ先の杖。つまり、予防原則の特色は、科学的な原因解明が途中段階でも対策を打つことにある。

ハザード/リスク

化学物質管理の基本概念。ハザードとは、ある物質の毒性の強さのこと。リスクとは、ハザードに暴露量
(人や動植物が物質に接する量) をかけた実質的な危険の大きさを指有毒性が強くても、暴露量が極めて少ない使い方であれば、リスクは小さいといえる。1974 年に施行された化学物質審査規制法( 化審法) は、当初、ハザードに注目した制度だったが、改正を重ねながら徐々にリスクペースの規制へと変化している。リスクに基づいた制度では、毒性はあるが微量で効果を発揮する有用な物質は適正に管理して使用する。毒性が低くても環境中に大量に放出される物質は使用を制限するなと合理的な規制ができる。現在、年間100 万人以上がマラリアで死亡している。

死者は70 年代以降に急増。その主因は、安価で強力な殺虫剤であるDDTが、毒性と残留性があるとして用途を問わず一律に規制されたことにあるともいわれる。WHO( 世界保健機関) は2006 年に、屋内の壁への吹き付けを認めた。

ビオトープ

ビオトープはドイツ語の「生物」を意味するBiOと「場所」を意味するTOpの合成語で、F 野生動植物が
生息する空間」を意味する。

地理的区分の最小単位を決める過程で生まれ、特定の生物が生存できる環境条件を備えた一定の空間を示す概念だった。最近では、生態系としての、森林や川、池、沼、湿地、草地、雑木林などの総称としても使われる。

汚染や環境破壊が問題とされ、自然の物質循環がスムーズに行われている生態系こそが、人間の生活にも適しているとの考えに基づいている。ドイツでは、野生動植物が棲む森林や池などを点在させるビオトープネットワークという考え方が、都市計画に組み入れられるようになった。その後、日本にもビオトープという概念が入ってきた。ビオトープには自然状態のものと、人為的に造り出したものがあるが、日本では後者の意味で使われることが多い。

バーチャル・ウオーター

世界では11 億人が安全な飲料水を手に入れられず、26 億人がトイレなど基本的な衛生施設を利用できずにいる。
人口増加や温暖化で世界の水不足はさらに深刻化する。日本は年間約4200 億m3 の水が利用可能なのに対し、実際の使用量は835 億m3 と水資源に恵まれているが、農畜産物の輸入という形で海外の水に依存している。これらの物品を生産するのに必要な水を「仮想投入水( バーチャル・ウオーター)」と呼ぶ。

東京大学の沖大幹教授の研究によれば、日本のバーチャル・ウオーター年間輸入量は640 億m3 に上り、年間の渡漑用水使用量を上回る。輸入先の1 位は米国の389 億m3、2 位はオーストラリアの89 億m3、次いでカナダの49 億m3、中国の22 億m3 。最大の物品はトウモロコシで、牛、大豆、小麦と続く。温暖化に伴って水資源が減少するとみられる米国が1 位となっているため、日本も食糧安全保障という意味で水資源問題と深く関係している。

生物多様性

生物は、約40 億年に及ぶ進化の過程で分化し、生息場所に応じた相互関係を築いてきた。その中ですべての生物の間に違いが生まれた。生態系が有するこのような多楡陛を生物多様性と呼ぶ。① 種内の多様性( 遺伝子の多様性) 、② 種間の多様性、③ 生態系の多様性の3 つがある。

生物多様性は、自然生態系がバランスを維持するために必要不可欠である。持続可能な発展のためにも、生物多楡吐への配慮は欠かせない。しかし、生物多様性は失われつつある。現代の生物が絶滅する速さは、過去6億年に比べて100 ~1000倍とも言われる。開発による生息地の破壊や乱獲、地球温暖化や環境汚染などが原因だ。環境省が2007年までに見直したレッドリストに記載された絶滅危惧種は、3155 種に及ぶ。
生物多様性を保全するための国際的な枠組みとして、1993 年に生物多様性条約が発効した。10年
までに生物多楡吐の損失速度を大幅に減らすという「2010 年目標」を採択している。日本は加盟国として95 年に生物多様性国家戦略を決め、02 年に改訂。07年11 月に第3 次戦略を閣議決定した。第3 次戦略は、次の4 つを基本戦略として掲げる。① 企業など社会への浸透、②人と自然の関係の再構築、③ 森・里り|卜海のつながり確保、④ 地球規模の視野で行動。06年に開かれた生物多様性条約締約国会議(COP8)では「地球規模生物多様性概況第2版(GB02)」を発表し、生態系の15 の要素のうち、12で生物多楡匪が悪化していると指摘した。
日本は10 年開催のCOP10 の議長国になる予定で企業を巻き込んだ取り組みが必要だ。
第3 次戦略では、企業活動ガイドラインを策定することも決めている。様々な分野でCSR( 企業の社会的責任) 調達の重要性が高まっており、企業にとって生物多様性は持続可能な経営に欠かせないテーマになっている。

戦略的環境アセスメント(SEA)

現行の環境アセスメントは、環境影響評価法(1999 年施行) に基づく環境影響評価制度で、事業の計画立案後に実施される。対象となる事業は、国などの許認可を必要とする事業や国の補助金を受ける民間事業と公共事業の中で、道路やダム、発電所など13 種類の事業を対象に指定している。
しかし、事業計画の方針が固まった後に実施する環境アセスメントによって事業を抜本的に変更することは難しい。そのため、環境省は事業に先立つ早い段階で環境アセスメントを実施し、複数の代替計画案と比較評価する「戦略的環境アセスメント(SEA)」のガイドラインを2007 年4 月に公表した。

SEAは、92 年の国連環境開発会議( UNCED)で合意された「持続可能な開発」を実現するため、環境破壊を防ぐ観点から開発計画の意思決定を評価し、対策を講じる体系的なプロセスの必要性から生まれた制度だ。米国やEU( 欧州連合) などの主要先進国では導入が進んでいるが、日本では事業対象を限定したガイドラインにとどまっている。その上、電力業界の反対に押し切られる形で「発電所」はSEAの対象外になった。電力業界には早期に計画を公表すると原発反対運動が広がるとの警戒感が根強くあるようだ。一方、欧米では早期に情報公開することにより、合意形成を得やすいとの意見もあり、発電所をSEAの対象にしている。

SEAのポイントは早期の情報公開と住民や有識者の参加、複数の代替案の比較評価にあり、大規模開発の事業プロセスの透明性を高める効果もある。国内でも02 年度の埼玉県を皮切りに、東京都、広島市が条例などで制度化している。
今後は、このSEAを共通ガイドラインとして、それぞれの事業に即した個別のガイドラインを事業を所管する省庁が策定する。既に国土交通省は、03 年に導入した「公共事業の構想段階における住民参加手続きガイドライン」にSEAを組み込む方向で検討を進めている。

遺伝子組み換え

ある生物の持つ特定の機能を利用するため、目的の遺伝子だけを取り出し、ほかの生物に移植してその
性質を付与する技術。

人間に役立つ性質は変えずに必要な性質を加えられる。そのため、害虫への抵抗力があり、農薬や病気
に強いといった性質を持つ遺伝子組み換え作物が開発されている。育種期間の短縮や、従来は交配で
きなかった生物の遺伝子を導入できる利点もある。米国で1994 年に販売されて以来本格的な商業栽培が
始まり、カナダやブラジルなどでも栽培が盛んだ。

栽培に当たっては、組み換え遺伝子の自然界への流出による、生態系への影響が懸念される。そのた
め、使用の国際的な枠組みとして、カルタヘナ議定書が2000 年に採択され、国内法としてカルタヘナ法を03
年に定めた。
この法律に基づいて使用・栽培の承認が下りている生物は100 件以上に上るが、実際に国内で栽培された作物はない( サントリーが09 年に青いバラを栽するのが初めて) 。国が安全性を確認した作物は輸入し、販売されてる。遺伝子組み換え作物の安全性審査では、従来の作物と基本的に同じかどうかといった、「実質的同等性」の有無を判断する。経済協力開発機構( OECD) が示した考え方だ。

しかし、輸入品への不安が消費者に広がり、国は01年に食品衛生法の規格基準を改正して安全性審査を義務化し、遺伝子組み換え食品の表示も義務づけた。大豆、トウモロコシ、ジャガイモ、菜種、綿に関係する農産物を表示対象にした。みそなどの加工食品にも表示を義務づけている。
日本の表示義務制度は、指令で全食品に表示を義務づけるEU( 欧州連合) と比べて甘いとの指摘がある。遺伝子組み換え作物の安全性については、研究者の間で意見が分かれるが、消費者の不安は根強い。
北海道は、06 年1 月に遺伝子組み換え作物の栽培などによる交雑を防ぐための条例を施行した。

外来種

本来の生態系には生息しないのに、食用やペットなどの目的で人為的に外国から持ち込まれた動植物
のこと。明治以降、日本に入って定着した外来種は約2000種に上る。在来種を駆逐したり在来種と交雑す
るなどして生態系を激変させる侵略的な外来種も少なくない。ハブ退治用に奄美大島に導入されたジャワ
マングースが、アマミノクロウサギを捕食するといった問題が起きている。

2005 年6 月に施行された外来生物法は、侵略的な外来種や、人の生命や農林水産業に被害を及ぼす外来種を、「特定外来生物」として指定し、飼育や輸入、販売を規制し、防除することを定めている。第1 次リストとしてオオクチバスやジャワマングース、アライグマなど37 種類、第2次リストとして上海ガニやウシガエルなど43 種類を指定し、その後、トマトやナスの受粉に利用されるセイヨウオオマルハナバチもリストに加わった。船舶のバラスト水も外来海生生物を運ぶとして問題視されている。

自然再生

失われた自然をかつての姿に戻し、生物多楡匪を回復すること。直線化された河川の蛇行化や、開発で
乾燥化した湿原の復活、森の再生、干潟や藻場の復元、里山里地の再生などの事業がある。

2003 年1 月には自然再生推進法が施行された。この法律は自然再生の公共事業を、国や自治体だけで
なく、住民やNPO(非営利組織)、専門家の知見を結集して実施することを目指している。様々な主体が参
加できるよう委員を公募して自然再生協議会を設置、協議会が事業の全体構想を作る。北海道の釧路湿
原から、湖岸環境の再生を目指す霞ヶ浦、サンゴ礁再生を目指す沖縄県の石西礁湖まで、全国19 ヵ所で協
議会を設置している。

土砂の流入でこの50 年間に湿原面積が2 割減少した釧路湿原では、環境省と国土交通省、農林水産省、
北海道庁などが発議人になり、100 人以上の委員から成る協議会が発足。釧路川の蛇行化や在来種の
森の再生など5 つの計画を実施している。

家庭の蓄電池

これからの時代は大きな震災への備えが重要になってきます。 停電などのトラブルが発生した際もスマートハウスなら蓄電した電気を使うことができます

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