化学物質・有機物質Ⅱ

JAMP

ジャンプと読む。アーティクル( 成形品) マネジメント推進協議会の略称。化学、電機、自動車などの各業種の大手企業が集まり、2006 年9 月に立ち上げた。
製品に含まれる化学物質の種類や量などの情報を、サプライチェーンの川上に位置する原料メーカーから、川下の完成品メーカーや消費者まで伝達するために設立された。共通の書式や情報開示のルールなども策定する。

EU( 欧州連合) では、06 年7 月施行のROH S( 有害物質使用制限) 指令や07 年6 月施行のRE ACH 規則( 新化学品規制) など、製品含有物質の厳格な管理を求める規制を次々に導入している。07 年3 月にはいわゆる[ 中国版ROH S] がスタートするなど、こうした動きはE U 以外にも広がっている。日本の産業界は、製品とともにその含有物質情報も円滑に流通させる仕組みを業界横断で作る必要に迫られている。JA M Pには、サムスン電子やL G 電子などの韓国企業も参加している。

RoHS 指令

電気・電子機器に対する特定有害物質の使用を制限するEU( 欧州連合) の指令で、「ロース指令」と読む。2006年7 月に施行した。
製品を使用後に埋め立て・焼却する時の環境負荷の低減や、再生材への有害物質の混入を防ぐことを目的に制定した。廃電気・電子機器の3R 推進を目的とするW EEE 指令とセットの規制である。EU では、次の6 物質を含む電気・電子機器の販売が、06 年7 月以降は原則禁止になった。① 鉛、② 水銀、③ カドミウム、④ 六価クロム、⑤ ポリ臭化ビフェニール(PB B) 、⑥ ポリ臭化ジフェニルエーテル( PB D E) 。

加盟国では指令に対応した国内法を制定した。企業にはこの国内法の順守を求める。製品中の均質材料に含まれる対象物質が、「最大許容濃度」以下であれば非含有とみな載最大許容濃度は、重量比でカドミウムが0.01 %、そのほかの物質は0.1 % だ。均質材料とは、製品を構成する部品をさらに分解した個々の材料を指丸ROHS指令では、「蛍光灯に使う水銀」などのように、特定有害物質を使わざるを得ない用途については、「適用除外項目」にしている。
ROHS指令と類似の規制は世界中に広がっている。07年1 月に米国カリフォルニア州が電子廃棄物リサイクル法(SB50) でROHS6物質の規制を開始した。
同年3月には中国が通称「中国版ROHS」を施行した。韓国は08 年1 月に「韓国版ROHS」を始め、WEEE指令やELV( 廃自動車) 指令に近い内容も盛り込んでいる。

日本では06 年7 月、ROHS指令と同じ6物質を含む電気製品にマークの表示などを義務づける「電気・電子機器の特定の化学物質の含有表示(J-MOSS)制度が始まった。
企業による技術開発も進む。松下電器産業はプラズマテレビ全機種で鉛の排除に成功した。鉛フリーはんだの開発では日本が世界をリードしている。

中国版RoHS

中国政府は電気製品などを対象とした有害物質の規制法「電子情報製品汚染制御管理弁法」呻国版ROHS)を制定、2007 年3 月に施行した。この規制は、EU( 欧州連合) のROHS(有害物質使用制限) 指令に対して中国の独自色を加味する規制内容だが、具体的な運用に不明瞭な点があり、法解釈が定まらないなど、あいまいさを残したままの施行となった。
規制の対象となる製品は中国で販売される電子情報機器全般だが、エアコン、冷蔵庫および洗濯機などの白物家電は規制対象製品から除外されている。規制対象となる物質はEUのROHS指令に準じて、鉛、水銀、カドミウム、六価クロムと臭素系難燃剤のポリ臭化ビフェニール(PBB)、ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE) の6物質。さらに政府の判断で随時、有害物質の追加指定を可能にしている。

EUのROHS指令は6 物質の使用を原則禁止としているが、現段階では中国版ROHSは6物質の使用を禁止していない。その代わり対象製品に規制対象物質の含有・非含有を示す規定されたマークの表示を義務づけている。含有マークは、中央に数字を入れる。この数字によって製品を使用しても規制対象物質が漏れ出さないことを保証する年数を示す。製品のどの部位にどの規制対象物質が使われているかも表示する

07 年3 月に施行された中国版ROHSは第1 段階で、第2 段階の施行も準備している。次の段階では、規制対象物質を使用せずに製造する技術が確立した製品は「重点管理リスト」に登録される。登録された製品は、規制対象物質が、0.1 質量%( カドミウムは0.01質量%) の制限量( しきい値) 以下に規制される。

重点管理リストに登録された製品を中国国内で販売するには、「中国強制製品認証( CCC) 制度」で定める認証マークを取得しなければならない。中国が実施してきた一部の電気・電子機器製品の強制認証制度にならえば、中国版ROHSの認証費用は製品ごとに50万円程度が見込まれる。

REACH 規則

EU( 欧州連合) が2007 年6 月に施行した史上最大の化学物質規制、リーチと読む。40を超える従来の指令や規則に代わる包括的な規制になる。
EUは、1981 年以降、市場に出た新規物質の安全性試験を企業に義務づけてきたが、流通している化学物質の大部分を占める既存物質のリスク評価が遅れていたため、REACHを導入した。企業は既存物質についても、新規物質と同様の安全性の確認を義務づけた。それまで政府が担ってきた既存物質のリスク評価の責任を企業が負うことになる。

具体的には、ある物質をEU域内で年間1t 以上製造・輸入する事業者は、その物質の安全性データを収集し、欧州化学品庁( ECHA) に登録する義務を負う。安全性データが未登録の化学品は市場から排除される。まずは、年間製造・輸入量1000t 以上の物質について、施行後3 年半以内の登録を求める。

REACHでは、08 年後半をめどに発がん性などを持つ高懸念物質( 認可対象候補物質) のリストを作成する。最終的には約1500 物質に上る見込みで、09年6 月からは、欧州域内で販売する製品について消費者からの問い合わせがあった場合、メーカーや輸入業者は製品に含有するこれらの物質の名前などを45 日以内に回答する義務を負う。つまり、少なくともEU市場に何らかの製品を供給する企業は、自社製品に含まれる物質の種類や量を把握しなければならない。候補の中から選ばれた認可対象物質は、ECHAの認可を得ないと使えなくなる。

日本では、06 年9 月に製品含有物質の情報を企業間で共有するための仕組みを作るために、化学、電機など各業種の企業が集まってアーテイクルマネジメント推進協議会(JAMP)を発足させるなど、REACHに対応する取り組みが進んでいる。欧州委員会の試算では、REACHの施行に伴う産業界の負担は28 ~58 億ユーロ(1 ユーロ=約160 円) 。ただし、疾病の予防効果などで約500 億ユーロの社会的費用が削減されるという。

J- M OSS

電気・電子機器を対象とした特定化学物質の含有表示方法を示したJIS( 日本工業規格) の通称で、ジェイモスと読む。この規格の順守を義務づけた「資源有効利用促進法改正政省令」も、2006 年7 月に施行された。
対象となる製品は、パーソナルコンピューター、ユニット型エアコン、テレビ受像機、電気冷蔵庫、電気洗濯機、電子レンジ、衣類乾燥機の計7 品目。これらの製品に指定された6種類の化学物質を基準含有量以上使用した場合、「含有マーク(オレンジマーク)」の表示と、ウェブサイトなどでの情報の開示が義務づけられる。一方、含有しない製品は任意で、「非含有マーク(グリーンマーク)」を表示できる。

対象となる化学物質は、「鉛及びその化合物」「水銀及びその化合物」「六価クロム化合物」「カドミウム及びその化合物」「ポリ臭化ビフェニール(PBB)」「ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)」の6種類、含有率基準値はカドニウムが0.01 %( 重量)、そのほかの物質は0.1%( 同)と定められた。経済産業省によれば、J-MOSS の対象となる7 品目以外の製品でも電気・電子機器製品であれば、任意にJ-MOSS のグリーンマークを表示できる。その場合
はウェブサイトで該当製品の情報を開示することが望ましい。

オレンジマーク(含有マーク)の表示は製品のリユースやリサイクルの際に適切な分別管理に役立ち、廃棄など環境への排出抑制や再生資源の品質向上を目的としている。

J-M OSSは、欧州連合( EU) が実施するROHS(有害物質使用制限) 指令(06 年7 月施行) と規制対象物質など共通点が多いが、基本的な考え方は異なる。ROHS指令は電気・電子機器に含まれる特定有害物質のEU加盟国内での使用を制限する規制だが、JMOSSは製品に含まれる特定物質の管理を目的としている。ROHS指令に対応した大手電機メーカーの多くは、J- MOSSのグリーンマークの表示に積極的だ。

植物由来プラスチック

植物を原料とするプラスチックは、従来、廃棄後に土に返る性質である「生分解性」が注目された。だが、地球温暖化問題が深刻さを増すにつれ、カーボンニュートラルの観点からC02排出抑制の利点が前面に出てきた。最近では生分解性のほとんどない植物由来プラスチックの開発も進んでおり、アピール点は温暖化対策に絞られている。

植物は光合成による成長過程でC02を吸収するため、廃棄時に燃やしても吸収したC02が大気中に戻るだけで、C02の排出収支が「ニュートラル」になるという考え方だ。さらに植物は再生可能な資源であり、適正な管理をすれC到ヒ石資源のように将来枯渇することもない。

植物由来プラスチックの代表的な素材は、トウモロコシのでんぷんなど多糖類を発酵させて作られる乳酸を高分子化した「ポリ乳酸( PLA)」だ。その物性は、石油由来プラスチックのポリスチレン(PS) やポリエチレンテレフタレート(PET) に近いが、耐熱性と耐水性が劣るため製品化の用途が限定されていた。

乳酸には分子構造の違いが右手と左手のように左右対称になっている2つのタイプがある。L一乳酸とD一乳酸だ。通常はL乳酸を主体にD乳酸が混じっている。帝人と乳酸などの開発・生産技術を持つ武蔵野化学研究所( 東京都中央区) は、この2 つを選択的に製造し重合する(つなぎ合わせる)ことで耐熱性を高めた。フィルム大手の東セロは、2 つを加熱混合する方法で分子構造の凝集性を強め、結晶性に優れたプラスチックを実現した。

トウモロコシ由来のポリ乳酸のほかにも、富士通がトウゴマ由来のナイロンを改良したものをノートパソコンの部品に採用している。米化学大手ダウケミカルとブラジルのエタノール生産最大手クリスタルセブは、2008年、サトウキビを原料とするポリエチレンの量産工場をブラジルに建設し、11 年から稼働させる計画だ。今後は複数の植物由来プラスチックが登場することになりそうだ。

グリーンケミストリー

相対的に環境負荷を抑えた化学処理工程のこと。
方向性としては、温暖化対策の観点から化学処理に必要なエネルギーを抑えようとする試みと、人体への健康影響や生態系に影響を及ぼす化学物質の使用を控える試みの2 つがある。

化学処理工程の省エネヘの取り組みは、コスト削減にもつながるため、早くから取り組まれてきた。石油化学工業などで見られる高性能な触媒の開発による生産性の向上が好例だ。

ここにきて有害な化学物質の不使用や使用削減の動きが注目を集めている。現在、代替が急がれている典型的な例が有機溶媒だ。物質を溶かす能力の高い炭化水素( 油) や、炭化水素と塩素やフッ素などを化合させた溶剤は、効率の高い「反応場」として幅広く利用されてきた。

しかし、揮発性が高い場合が多く、VOC(揮発性有機化合物) になり、労働環境を悪化させるばかりでなく、大気に放散した場合、光化学オキシダントの原因になるとも言われている。

そこで、塗装工程では油性塗料から水性塗料への切り替えが進んでいる。ただ、水性塗料は油幽こ比べ乾燥に時間がかかるため、生産性が落ちたり、また生産性を維持しようとすると乾燥に要するエネルギーが増したりするなどの問題点もある。そこで、ライン全体の設計を見直して省エネと両立させるなどの工夫も求められているほか、溶媒を使わない「粉体塗装」を採用する動きも活発化している。

分解や洗浄工程では、溶剤を使わずに高温高圧の水( 超臨界水や亜臨界水) やC02(超臨界C02)を用いる試みもあるJPCBなど難分解性の有害物質の分解で実用化されている。このほか、水中のマイクロバブル( 超微細の泡が破裂する際の振動を活用)によって分解を促進したり洗浄したりする研究や技術開発も進んでいる。三洋電機が商品化した、洗剤を使わず電解水で洗浄する洗濯機も、広い意味でグリーンケミストリーと呼べるかもしれない。

水俣病

水俣病は、1956 年に熊本県水俣湾周辺で発生が確認された有機水銀中毒症。新日本窒素肥料( 現チッソ) の水俣工場( 水俣市) が排出したメチル水銀が魚介類に入り、その魚介類を食べる食物連鎖で起きた中枢神経疾患である。当時は食物連鎖による公害に対する認識が低いこともあり、原因を特定できないまま死者は1000 人を超えた。
水俣病患者は、手足の感覚まひやけいれん、言語障害、運動失調など中枢神経疾患の症状があったが、厚生省(= 当時) が水俣病の原因が新日本窒素肥料水俣工場の廃水によると認めたのは、発生確認から12年後の68 年だった。
65 年に新潟水俣病と呼ばれる有機水銀中毒被害が発生し、昭和電工鹿瀬工場の廃液が原因と判明した。67年に新潟水俣病被害者が昭和電工に対し損害賠償を求める訴訟を起こし、71 年の一審判決で勝訴。73年には熊本水俣病の一審判決でも原告の患者側か勝訴した。

73 年の判決後、原因企業が水俣病に認定された患者約3000 人に対し、1 人当たり最高1800 万円の一時金や医療費を支払う協定を締結した。しかし、国の認定基準を満たさない「未認定患者救済」が長年の社会問題になっていた。95 年、患者約1 万1000 人に卜時金を一律260 万円、患者団体に50 億円を支払う」ことで政治解決が図られたが、その救済策から外れた被害者が続けた訴訟で最高裁は原告勝訴の判決を下し、国の患者認定基準を広げる判断を示していた。

そこで水俣病として公式に認定されていない健康被害者に対し、与党プロジェクトチームは2007 年10月末「150 万円の一時金」と「療養手当てなど月額1万円」の支給を柱とする救済案をまとめた。同年11月、一時金の拠出を求められているチッソは、与党プロジェクトチームの救済案の受け入れを拒否。08年2月、鴨下一郎環境大臣は大臣室にチッソ会長を呼び、解決に向け努力するよう求めた。

E PA(米環境保護局)

米国の環境政策全般を担当する行政組織。環境保護局または環境保護庁と訳され、イーピーエーまたはエパと発音する。
日本の環境省に相当するが、上位機関として大統領直属の環境諮問委員会( CEQ) があるため、政権の環境政策の影響を強く受ける。主に大気汚染、水質汚染、廃棄物、農薬・有害化学物質などの対策を担当する。環境活動に関して特別の貢献や技術的功績のあった個人や団体、企業などを表彰するEPAアワードなどの賞もある。

2007 年12 月、EPAは自動車の排出ガス規制を独自に強化しようとするカリフォルニア州に対して、これを許可しないと決定した。この決定を不服としたカリフォルニア州など15 州が、08 年1 月、EPAの決定取り消しを求めて提訴するなど対立が激化している。米国では自然環境行政については、内務省の国立公園局、魚類・野生生物局が主に担当する。この点、環境省が自然保護行政を担当する日本とは異なる。

D DT

有機塩素系の殺虫剤。1939 年に開発され、安価で殺虫作用が強いことから、防疫・農業向けに世界中で広く使われた。DDTの殺虫作用を発見したスイスの科学者、ミューラー博士は48 年にノーベル賞を受賞した。しかし、62 年に名著『沈黙の春』で毒性と残留性が指摘されたことがきっかけとなり、各国で規制が始まった。日本では農薬取締法によって71 年にDDT製剤の販売を禁止した。81年には化学物質審査規制法で、製造・輸入も禁止になった。POPS(残留性有機汚染物質) を規制するストックホルム条約の対象物質で、環境ホルモンとしても知られる。

ただ最近は、年間100 万人以上が死亡するマラリアに対する予防効果の高さが見直されており、2006 年にWHO(世界保健機関) が屋内の壁への吹き付けを奨励する方針に転換した。単なるハザード( 毒性の強さ)より、実際のリスク(毒性×暴露量) の大きさが重視されたためだ。壁への吹き付けは暴露量が少なく、マラリア予防の便益が勝るとされる。

家庭の蓄電池

これからの時代は大きな震災への備えが重要になってきます。 停電などのトラブルが発生した際もスマートハウスなら蓄電した電気を使うことができます

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